月刊誌『人材教育』2010年09月号

昨今、ゆとり世代を中心とした学力低下の問題がメディアで喧伝されていますが、「読む・書く・考える」といった基本能力の低下は、学生や若手だけの問題でしょうか。パソコンばかり使っていて漢字が書けなくなった、指示待ちが増え考えなくなった――こうした状況は、もはやどの世代にも見られる事象です。
 こうした現状を踏まえ、編集部では改めて、9~11月号の3カ月連続で「読む・書く・考える」をそれぞれ特集として取り上げます。9月号は「読む力」。この「読む力」には、文章を読む、本を読むといった基本的なものから、人の気持ちを読む、数字や市場を読むといったものまでさまざまな読む力を含みます。そして、新入社員・中堅・管理職といった各階層や、職種別に求められる「読む力」を掘り下げ、それらをどのように高めていけばよいかを探りました。

巻頭インタビュー 私の人材教育論
挑戦、チームワーク、納得性の高い評価がファインプレーを生む

イチローや本田圭佑、北島康介など、一流選手のプレーを支えるスポーツ用品製造・販売を行うミズノ。 その裏には、社員たちの数々のファインプレーが隠されていることはいうまでもない。 1人ひとりのファインプレーを生み出していたのは、挑戦する風土、チームワーク、納得性の高い評価、創業時から続く徹底したクリーンな社風などである。 104年の歴史を重ねる同社の土台について、4代目社長の水野明人氏が語る。

フィンランド コミュニケーション教育の重要なヒント 今、日本で求められる「ことばの力」

さまざまな人が協働する現代社会では、かつてのように“あ・うんの呼吸”が通じなくなり、代わりに、言葉をつくして、わかり合うことが求められている。そんな今、日本人に必要なのは、言葉の限界を知りながらも、言葉の力を鍛えることだ。

企業事例(読む・書く・考える) キヤノンマーケティングジャパン
コミュニケーションは読み書きから

最近の若手はデジタルの情報処理能力に長けているといわれるが、現場で必要とされるのはむしろ「読む・書く・考える」という、アナログの基礎的能力。こうした能力の低下に危機感を覚え、いち早く教育に取り組んでいるのがキヤノンマーケティングジャパンである。

Special Interview
齋藤孝の“読む力”

ここからは、いよいよ「読む力」について見ていく。 『三色ボールペンで読む日本語』『読書力』などの著者であり、“読書の達人”である齋藤孝氏は、読者が「読む力」の基本であると言う。 そこで、まず齋藤氏に読書の効用と 「読書力」を高める方法を聞く。

What is the merit of reading?
読む力を読み解く──階層別に求められる読む力とは

ビジネスパーソンは、齋藤孝氏が語った「読書力」をもとにさらなる「読む力」を、自身の成長過程に合わせて高めていく必要がある。 そこで、そもそもビジネスに求められる読む力とは何かを掘り下げ、読む力をつけるメリットを理解したい。 そのうえで、どのように読む力を向上させていくべきかを明らかにする。

Various way to read
さまざまな読む力──階層・職種別で異なる読む力

「読む力」とは、「本を読む」などの読解力だけではない。「市場を読む」といった分析力や、「意図を読む」「表情を読む」などの、人の気持ちや目に見えないものを察知する力も指す。 これらの読む力は、階層が上がるにつれて向上・拡大していくものであり、職種によって求められる種類も異なる。さまざまな読む力を見てみよう。

企業事例(読む①) TKC
読書を習慣化する仕組みで自分軸を持つ人を育てる

会計事務所や地方公共団体などの専門業務を、情報テクノロジーを使ってサポートする事業を展開するTKC。 同社では、創業時から社員に読書を奨励する制度を取り入れてきた。 読書を知識・スキルの向上と自分の考えを相手に伝える能力の強化に役立つものと位置づける、同社ならではの読書制度を紹介する。

企業事例(読む②) 日立システムアンドサービス
新時代のSEに必要な3つの読む力

システムインテグレーション事業を展開する日立システムアンドサービス。 同社では、SE(システムエンジニア)をソリューションエキスパートと定義し、問題解決能力に優れた人材を育成するための教育を行っている。 新時代のSEに求められる能力を外部環境を読む力、ステークホルダーの気持ち・ニーズを読む力、自分を読む力と位置づけて人材を育成している同社の「読む力」養成の教育体制を紹介したい。

人材の可視化を成功させ、経営効果を実感する5つのポイント

ITシステムを利用して、個々の従業員のスキルや職歴といった人材情報の可視化に取り組む企業が増えている。しかし、ただ闇雲に取り組んでも効果を得ることは難しい。そこで、SAPジャパンHCMソリューション部ソリューションスペシャリストの桃木継之助氏に、人材の可視化を成功させる要点を聞いた。

中原 淳の学びは現場にあり! 第2回
緊張感とモチベーションの維持で車内清掃の現場を“新幹線劇場”に

東京駅で、東北・上越方面の新幹線の清掃をすべて担当する鉄道整備(TESSEI)。 7分間ですべての清掃を終える技術力だけでなく、美しい所作は海外からも取材がくるほど。“魅せる清掃”が、どのように生まれたのか検証します。

人材教育最前線 プロフェッショナル編
常に学び続けることが自らのキャリアを輝かせる

旭化成は9つの事業会社を持つ総合化学メーカー。人財・労務部人財戦略・開発室課長の竹内雅彦氏は、2007年に事業会社の旭化成建材から持株会社へと異動し、グループ共通の研修を担うこととなった。旭化成の事業は多岐にわたり、なおかつグローバルに展開される。その事業を支える人材を育成するための研修の場は、20年以上国内市場だけの建材ビジネスに従事していた自分にとっても、未知の分野を知る学びの場であると竹内氏は語る。経営環境の変化に臆せず、果敢に課題に挑戦し続ける竹内氏の、人材育成に対する想いを伺った。

第30回 能力開発総合大会 HRDJAPANの歴史を振り返る
人・組織づくりの基軸を問い直す大切にすること、変えること

アジア最大級の能力開発総合大会「HRDJAPAN」は今年度で30回目(9月8日~10日開催)。 その軌跡を振り返れば、日本企業が置かれてきた背景と、人材開発の潮流が見えてくる。 背景も潮流も変化は激しいが、HRDJAPAN30回記念大会の統一テーマに通じる、人・組織づくりの“基軸”は確かにある。

TOPIC-①「リフレクション・ラウンドテーブル」創設者フィル・レニール講演会レポート
経験を語り合うコミュニティーがミドルマネジャーの力を引き出す

企業の成長のカギを握るミドルマネジャーたち。その能力開発には、互いに経験を語り合い、対話を繰り返すという“学び合うコミュニティー”を構築することが有効だという。 それが「リフレクション・ラウンドテーブル」だ。2010年6月15日、本プログラムをヘンリー・ミンツバーグ教授とともに創設したフィル・レニール氏が来日。レニール氏による特別講演会と、日産自動車と富士通ビジネスシステムの担当者を交えたパネルディスカッションが行われた。

TOPIC-② ヒューマンキャピタル2010 特別シンポジウムレポート
『いま日本企業の人事・人材開発部門が構築しなければいけないもの』個と組織を活かすために人事が持つべきビジョンとパッション

企業の人材・組織戦略のための専門イベント「ヒューマンキャピタル2010」が7月7日から3日間、開催された。特別シンポジウム『いま日本企業の人事・人材開発部門が構築しなければいけないもの~2020年を見据えた人事ビジョンを考える~』では、慶應義塾大学花田光世教授の司会により、人事・人材開発の最前線で活躍してきた秋山裕和氏、飯島英胤氏、横山哲夫氏をパネリストに迎え、これからの人事が持つべきビジョンが示された。

論壇
人材開発部門こそ研修を受けよ!成果を出す人材開発部が持つ5つの能力とは

企業内で最も研修を受けていない部門──それは意外にも人材開発部門ではなかろうか。 人材開発部門は、社員を研修に派遣する(時には自ら参画する)が、自らのためには研修を受けない傾向にある。 しかし、組織内で人が育たなくなっている今、研修を受けることで、自部門のあるべき姿を本当に考え直さなくてはならない部門は、人材開発部門ではないだろうか。 人材開発部門が身につけるべき考え方や知識・技能を整理したうえで、組織に貢献するために、今、向上すべき能力やその方法について、明らかにしたい。

調査データファイル 第103回
『平成21年度 能力開発基本調査報告書』より 教育訓練と経営戦略の修正が企業利益の源泉になる

短期間で効果が表れにくい教育訓練は、不況対策の名目として、まずその経費を削減された。しかし、その対策の下で日本の企業の利益と成長が停滞している現実を見れば、今行わなければならないのは教育費の削減ではなく経営戦略の大胆な修正・変更のほうであろう。能力開発や人材教育の問題点をデータから浮き彫りにし企業の持続的成長に結びつく教育訓練のあり方を考える。