月刊誌『人材教育』2010年11月号

9月号から始まった3カ月連続特集最後となる本号は、「考える力」を掘り下げます。あらゆる行動の基本にあると言える「考える力」。けれども昨今は、指示待ち社員の増殖や、失敗を恐れて考え抜こうとしない社員が目立つなど、職場からは「考える力」の低下を嘆く声が聞こえてきます。
その一方で、価値観が多様化し、ネットの発達やグローバル化など外部環境も複雑になってきた現代では、自ら考えることの必要性は日々増しています。
それではどのようにしたら、「考える力」を高めることができるのでしょうか。そのためにはスキルも必要ですが、重要なのは、①考える過程で生じる曖昧さへの耐性、②考えを持続させるエネルギー、③考える方向性を定められるだけの価値観を持っていることだと編集部では考えています。
 11月号では、「考える力」の本質とは何か、どうしたらそれを高めることができるのかを識者と企業に聞き、そのヒントを提示します。

巻頭インタビュー 私の人材教育論
自社の歴史を尊びノウハウや技術とともに文化や理念を継承する

1957年に自動車タイヤ用合成ゴムを造る半官半民の国策会社として誕生したJSR。歴代の経営者たちは、合成ゴムだけでは事業が先細りになることを案じ、電子材料などの新規分野への多角化を志向した。今、その多角化は実を結び、それぞれが中核的事業に育ち、同社の継続的な成長を支えている。2009年から社長となった小柴満信氏は、そんな堅実な同社でも、近年大切なものを薄れさせてきていると感じている。そしてそれを取り戻すのには、「歴史」――先人の知恵がカギとなるとも語る。その本意と、これからの人づくりへの決意を聞いた。

Special Interview
「考える力」の低下は、国の存亡に関わる

「考える」という言葉は頻繁に使われるが、その正体は何か? 物質と情報が豊富な現代人は、ほとんど考えていないという外山氏に、考えることの本質、そして、どうしたら考える力を伸ばすことができるかを聞いた。

How should we think?
階層別に求められる考える力

私たちは一見、24時間365日考えて暮らしているように見えるが、その実、真に考えているとはいえないことが多いのではないだろうか。 だが、訓練次第で、より深く、より広く、より的確に考えることが可能になる。それは新しい知覚の地平、いわば“新しい世界”を手に入れることに他ならない。それではここで、考える力を強化する方法を考えていこう。

フレームワークを最強の味方にする方法

ここまでは、「考える力の本質」について考察してきた。 では、実務において「考える力」を最大限に発揮し、より仕事の質を高めていくには、どんな手法が最適なのか。 そこで着目されるのが「フレームワーク」である。 フレームワークを適切に選ぶことさえできれば、効果的に使いこなすことができる。そのポイントを紹介する。

企業事例(考える①) GE
個人と組織の考える力を高めるリーン・シックスシグマ

米国を代表する企業ゼネラル・エレクトリック(GE)の業務改善手法として有名な「リーン・シックスシグマ」。 問題解決に必要な考えるポイントが示されているため、この手順を学ぶことで自然と考える力が身につくのだ。 組織全体に浸透し、共通言語となっていることで、組織全体の考える力を向上させている。

企業事例(考える②) ねぎしフードサービス
経営理念の浸透で自ら行動する人財を育成

都内で『牛たん麦とろねぎし』をチェーン展開するねぎしフードサービス。同社では、点在する店舗で働く従業員が経営理念を理解し、経営理念をベースに社員自らが考えて行動するための環境と仕組みが整えられている。PDCAサイクルを回すことこそ、成長のための原理原則と考える同社のさまざまな取り組みから、考える力が育つ企業の秘密を探る。

企業事例(考える③) 万協製薬
書いて笑って、“全社員が考える経営”を実現

2009年に日本経営品質賞を受賞し、一躍、全国にその名が知られるようになった万協製薬。1995年に阪神淡路大震災で被災した同社は当時、苦しい再スタートを余儀なくされたが、その後の飛躍的な成長は、同賞の審査員に「これまでの継続的革新の軌跡は、経営品質の考え方を実践した第二創業のモデル」といわしめた。同社の躍進を支えた“全社員が考える経営”と、それを実現したオリジナリティあふれる施策を紹介する。

Special Interview
日本人よ、世界を捉える言葉を取り戻せ

石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏と、著名な作家陣が知事と副知事を務める東京都は、昨今の活字離れや言語力の低下を危機的状況と認識し、2010年4月から「『言葉の力』再生プロジェクト」を展開している。そこでその背景にある問題意識を、近現代史と歴史認識を自身のライフテーマとする猪瀬氏に聞いた。

組織事例(読む・書く・考える) 東京都庁
まずは東京都職員から「言葉の力」を再生する

P40で猪瀬副知事も語る、『言葉の力』再生プロジェクトの柱の一つは、グローバルスタンダードの言語技術の習得を東京都から広めていくもの。 それにはまずは足元からと、三森ゆりか氏を講師に迎え、都庁で働く新人職員や教職員を対象に研修が行われた。 この研修を含め、このプロジェクトについて紹介する。

アンケートから見る「基本能力不足」
基本能力不足が最も顕著な世代 5割弱が中堅・管理職と回答

基本能力不足というと若手ばかりが注目される。 だが、基本能力が不足しているのは、本当に若手だけだろうか?そして「基本能力」とは、具体的に何を意味するのか? それらを明らかにし、企業における基本能力不足の実態を把握するために弊誌ではアンケートを実施した。 本稿ではその内容を紹介する。

「イノベーション」に対する心の中のカベを取り払え!
マネジャーによる仕事と組織の革新を進めるイノベーション・フォーカス・プログラム

国際競争力が低下し、閉塞感が漂う日本の産業界。この状況を打破するには、新たな価値の創出につながる「イノベーション」が不可欠だ。そこでリ・カレントでは、企業のマネジャー層を対象に、日々の仕事のやり方を変え、組織を変えていく「イノベーション・フォーカス・プログラム」を開発し、提供している。開発のねらいやプログラムの特徴などについて、同社の担当者に聞いた。

考える人、考える組織を育む
NGK の創造的
『場づくり』の研修プログラム

斬新な発想と、高い生産性を誇る北欧企業の世界進出が続くなか、その鍵となるチームの思考やコミュニケーションを高める北欧発のメソッドが、日本でも注目を集めている。今回、注目の北欧メソッドを取り入れた企業研修を提供する、株式会社NGK の長本氏に話を伺った。

思考を耕し、判断力・意思決定力を高める
感動から生まれる考える力

ビジネスを取り巻く環境が大きく変化している今こそ、ビジネスパーソンは過去の経験や思考にとらわれることなく、自ら考え、行動しなければならない。しかし、現実には「思考停止」ともいえる状況に陥っている人が多くみられるようだ。そこで今回、イコアインキュベーションの3名に、考えることとは何か、どうすれば判断力や意思決定力を高めることができるのか、話を伺った。

PDCA を確実に回しチームを強くする
EM 法を身に付けた“考える管理者”

日本で紹介されて以来、現状を打破する“考える段取り”を学べるとしてビジネスパーソンから注目を集めているのがEM 法だ。特に複雑で困難な状況をマネジメントする管理者からは、大きな注目を集めている。そこで今回、株式会社日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)の北村英男、宮田克美の両氏に話を伺った。

中原 淳の学びは現場にあり! 第4回
“協力と競争”で美容師の成長を促す
育成マインドを醸成するチーム制

誰にとっても身近な存在である美容室。日本国内に美容室は20万軒、美容師は40万人以上いるといわれています。しかしその育成は個々の店舗により異なります。 今回はチーム制で人材育成を行っているという美容室を訪問しました。

ベンチャー列伝 第22回
市場価値の高い人材は挑戦と支援によって育つ

顧客企業の抱える課題を解決するのが、アウトソーシング事業を担うエスプールのミッション。人材育成を同社のコア・コンピタンスと位置付け、柔軟な人事制度を設けたり、新規事業へのチャレンジを可能にする施策を講じるなど、社員の能力向上支援を充実させている。

人材教育最前線 プロフェッショナル編
最も重要な教育は人格を形成し、高めること

「あなたと、コンビに」でお馴染みのファミリーマート。今年9 月14日には、50 ~ 65 歳の“おとな”向けの商品やサービス開発などを目的とした「おとなコンビニ研究所」を発足。社会貢献など、大人の生活を提案すると言う。このように次々と新しいアイデアを打ち出し、激化するコンビニ業界の競争を勝ち残る――そのために必要な人材とは何か。今年4 月、管理本部総務人事部人財開発グループマネジャーに就いた小林桂氏は、「人格」が最も重要だと語る。ファミリーマートが求める人財像を、人格に価値を置き、明確にした氏に、教育に対する想いを聞いた。

JMAM 通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 日本通運
“他己啓発”から始まる自ら学ぶ職場づくり

通信教育を人材育成に活用し、自ら学ぶ風土を醸成している企業に対し授与される「JMAM 通信教育優秀企業賞」。 物流業界をリードする日本通運は、階層別教育・自己啓発の双方で通信教育を活用。 集合研修との連動や、通年での受講受付などの独自の試みを行い、学びへの気づきを1人でも多くの従業員が得られるよう促す取り組みによって受賞に至った。

JMAM 通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 アヲハタ
上司や先輩の率先垂範が自ら学ぶ連鎖をつくる

食品加工メーカーのアヲハタも、「JMAM 通信教育優秀企業賞」を受賞した7社のうちの1社である。 若手社員の能力開発への取り組みを目標管理の評価項目にしたり、経営方針に連動した推奨講座を設定するなど、自己啓発への取り組みに熱心である。しかし、同社の自己啓発の一番の特徴は、長年培われてきた「学びの連鎖」である。

論壇 複雑性が増す今こそ「複合思考力」を磨け
管理職の「考える力」を再構築せよ

企業が直面する課題の複雑性が増している。その複雑性に対処するには、事象や課題を個別に捉えるのではなく、それらの間の関係性(つながり)を解き明かすことがカギになる。 こうした時代には、従来の論理思考(分析的思考)スキル重視の思考教育だけでは対応し切れない―― 広げる・分ける・つなげるという3つの思考法をバランスよく統合させて開発・活用すること、「思考(スキル)」と「マインド」を一体的に養うことがポイントだ。

調査データファイル 第105回 番外編
「平成21年 若年者雇用実態調査」から明らかになる
自分の能力を活かしたいと願いつつ、迷う若年者たち

就職氷河期以降の若者は、就職に対して、団塊の世代とは比べものにならないほどの困難を強いられている。 しかし、そんな厳しい環境に置かれたからこそ、没個性的な団塊世代とは異なり、一部に非常に高い職業能力を携えた人材も育っている。 若年層に前向きな職業観を与え、その能力を開発するには、企業と学校が協力して、これまでとは違うアプローチをとるべきである。