月刊誌『人材教育』2011年01月号

日本には、グローバルで活躍する企業が多々あります。それらは日本企業が
実現する人づくりや、これまでも、グローバル化に対応してきた証でもあります。
これらの優良企業は、進出先の人々と同じ釜の飯を食い、心に寄り添い、
教育を行い、人材として大切にしてきました。そうして信頼関係を築いてきたからこそ、
受け入れられ、企業力を高めることができたのではないでしょうか。
本号では、BRICsの台頭や内需減少などの経済環境が激変している中、
こうした日本企業の強み、誇るべき日本的人づくりを再認識したうえで、
これから求められるグローバル人材育成について考えていきます。

巻頭インタビュー 私の人材教育論
自ら学びを見出し将来を切り拓く人材を育てる

「進研ゼミ」など、通信教育事業を中心に子どもから大人まで、日本人の「学び」を支える、ベネッセホールディングス。昨今では、中国に進出し27万人の「こどもちゃれんじ」人口を獲得している。また国内でも事業領域を介護や育児、生活に至るまでをカバーし、事業の領域と規模を積極的に拡大させている。そんな同社が今、注力している人材開発課題は? また、日本の教育の現状をどう見つめ、どう貢献しようと考えているのだろうか。代表取締役社長の福島保氏にその考えを聞いた。

グローバル時代における
これからの日本的人づくり

昨今、グローバル人材育成が急務となり、多くの企業がその取り組みを始めている。そこで中心となるのはMBA的ビジネス知識や語学教育、異文化理解などのスキル教育である。もちろん、スキルは欠かせない。だが、グローバル人材に求められる本質的な能力は、それだけでは得られないだろう。本特集の目的の1つは、その本質を探究することである。 そして、もう1つは、グローバルに通じる日本の強みを再考することだ。新入社員の約半数が海外で働くことに消極的だといわれるほど、若手の内向き志向が強まる一方、企業も新興国に世界市場を席巻され、存在感が薄れてきている。 こうした状況で、日本の強みを再認識することは、地に足をつけ、自社の中で変えるべきところと、変わらずに維持するところを冷静に判断し、企業力を高めることにつながるのではないだろうか。 本特集では、多様な日本の強みが挙げられた。今回のオピニオンで上海万博日本政府代表の塚本弘氏が語った「協調性」、一橋大学の守島基博教授や中央大学の中島豊特任教授が言及した「人を育てる意識」、企業・個人事例で明らかになった「人を大切にし、長期的に育てること」「現地の地域や人と共に成長すること」「約束を守る誠実さがあること」「礼儀正しく、謙虚」など、なじみ深い日本企業の特性ばかりだった。 同時に、すべての人がグローバルで仕事をするうえで必要だと指摘したのが、他者を受け入れることだ。そもそも、グローバル化とは、「二元論から多元論に変わること」(中島特任教授)である。多元論の世界では、日本と非日本に分けて、優劣をつけることはできない。それぞれが異なり、それぞれに魅力があるからだ。 異なる価値観を持つ他者を受け入れることは、時に難しい。だが、その一歩は実は、「自己理解」にある。それが他者理解につながるからだ。日本の強みを考えることは、自らのアイデンティティを考えることであり、自己理解を深めるだろう。 日本の強み――本特集ではさまざまな強みが語られたが、その根幹は、これまで正しい志を持つ日本企業が、脈々と培ってきた「人づくりの信念」にある。今一度その強みに着目し、磨き上げることは、日本が世界に伍して勝ち抜くための力となるはずだ。本特集が、世界の中の日本が輝きを増す一助になれば幸いである。

Opinion
協調性という日本人の強みに、個性とロジックを

通商産業省、JETRO、日欧産業協力センターに籍を置き、2010年には上海万博日本政府代表と、万博参加国議長として主催国中国とさまざまな折衝を行い、まさにグローバルに活躍をしてきた塚本氏。その氏に、グローバル人材に必要な要件と、海外にも通用する日本人の強みを聞いた。

Opinion対談
グローバル時代における「日本的」の意味を問う

これまで日本企業の強みとされてきた、「人づくりの力」。今後、グローバルな舞台において、その強みはどのように発揮されるのだろうか。また、課題はどこにあるのか。人材マネジメントの教育研究で第一線に立つ一橋大学大学院商学研究科教授守島基博氏と、中央大学大学院戦略経営研究科の特任教授であると同時に、現在外資系金融機関の人事実務に携わる中島豊氏に、それぞれの立場から話を伺った。

Opinion Column 日本の人づくりの原点を探る
宮大工流・人材の育て方

ここまでグローバル時代で通用する日本の強みについて紹介してきた。そこで明らかになったのが、日本人は、人に対するケアができる、協調性がある、相手を思いやるといった世界に通用する強みを持っているということだ。そうした強みが生まれた源泉とは何か……。伝統を重んじてきた宮大工の世界での人材育成から、日本の人づくりの原点を探る。

企業事例①
パナソニック 国境を越えて理念を共有し長期的に現地の人材を育てる

世界中に約190もの拠点を持ち、さまざまな国籍の人が働くパナソニックでは、現地の人材を育成し、事業を任せる方法で現地法人を育てている。人種や文化、国の体制などが異なる国々で、“パナソニック”としての一体感を保つための核となっているのが同社の「経営理念」だ。

企業事例②
ヤクルト本社 異文化を理解する「国際塾」で世界に通用する人材を育成

乳酸菌飲料でお馴染みのヤクルト。 日本を代表するグローバル企業の1つであり、世界32の国と地域で事業を展開している。 同社が、社員の国際性を高めるために行っている教育の1つに「国際塾」がある。 同社ではグローバル人材に必要な要件を「異文化を理解してより良い解決策を導くこと」としている。 そんな「世界で通用する力」を養成するための同社の人づくりを紹介する。

企業事例③
日揮 己を知り相手を知りお互いに尊重し、協働する

企業は段階を経て、グローバル化を進めるが、日揮はすでにグローバル企業といえる。海外勤務社員はもちろん、本社にいる社員でも常に異文化の中で働くのが当然だ。そうした同社が重視しているのが、OJTと、“マルチナショナルマインド”である。

Column
マザーハウスの人づくり

1人の若き日本女性が「途上国にある良いものや人に光を当てたい」と考え、2006年、行動を起こした。アジア最貧国に向かった彼女は、その国の人たちの労働に正当に報いる方法として、ビジネスを始めた。その実態はまさに、「日本的」モノづくりと人づくりである。

インドで実践する心身を養う
日本的技能教育
「トヨタ工業技術学校」の人づくり

インド南部、郊外の都市に、モノづくりの技能教育を行う職業訓練校、「トヨタ工業技術学校」がある。 経済的余裕がない学生に対し、無償で技能教育の機会を提供。その教育方針は、日本での人材育成をベースにしたものだ。 海外で「日本的人づくり」はどのように機能するのか。同校の実態から見てみたい。

HRD JAPAN 特別対談
「目に見えないものを見る力」
真山 仁 小説家 × 船川淳志 グローバル インパクト 代表パートナー

2010年9月10日HRD JAPAN 3日目に、長年グローバル化について提言を行ってきた船川淳志氏がホストとなり、 小説家・真山仁氏を迎えた。グローバル化に課題を抱える現在の日本に対して、両氏が鋭い提言を行う。

グローバル人財を育成する“企業インフラ”とは
株式会社 シルクロード テクノロジー

米国シカゴに本社を構え、『ワーク・ハッピー!』を提唱しているSilkRoad technology Incの日本法人としてビジネスを開始した株式会社シルクロードテクノロジー。同社が提供するクラウド型の人財管理統合サービスは、採用、人財育成、人事労務までをカバーし、企業のグローバル化に対応できる新しいシステムとして注目を集めている。そこで今回、同社副社長の小野りちこ氏に、このシステムについて話を伺った。

自己啓発制度を活性化し“学習する風土”をつくる
株式会社日本能率協会マネジメントセンター

社員一人ひとりが自ら学ぶ“学習する風土”は、企業が発展を続けるために欠かせないものだ。こうした風土は、どのようにしてつくられるのか。今回、株式会社日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)の越前屋公崇氏に、学習する風土づくりについて、話を伺った。

連載 中原 淳の学びは現場にあり! 第6回
「できること」に目を向け、能力を伸ばす障がい者が生き生きと働くパン屋さん

焼きたての美味しいパンが食べられるカフェとして人気のスワン カフェ&ベーカリー。ランチタイムは常に満席という繁盛ぶりですが、実はこの店のスタッフの半数以上が知的または精神的な障がい者だといいます。障がい者が健常者とともに生き生きと働く職場を訪ねました。

連載 ベンチャー列伝 第24回
“居心地”の良い職場づくりが世界屈指の技術を支える

独創的な技術創出には、優れた人材が不可欠だ。日本の製造業の最先端技術を支え、海外からも視察が絶えない南武。同社では“脱3K”に取り組み、若手や女性技術者を積極的に採用・育成する。社員の帰属意識を高めることで、他社との差別化を図っている。

連載 人材教育最前線 プロフェッショナル編
異文化で働く体験を通して自らを磨き、組織を強くする

日本を核にアメリカ、ヨーロッパ、アジア、中国に70カ所を超える拠点を中心に事業を展開しているアルプス電気グループ。2010年3月期の海外生産売上高は、71%を占めている。同社は、多くの日本人が海外現地法人へ出向する一方で、海外現地法人の社員が日本の拠点に勤務する研修制度の導入も進んでいるのが特徴。グローバルな人材活用に注力した教育が行われている。そうした同社で10年以上にわたり、人材開発や人事といった人づくりにまつわる部署で活躍してきたアルプス電気松山慎二人事部長に、人材育成に対する想いを伺った。

 “わかったつもり”を“できる”に変える
JMAM の新入社員基本行動トレーニング

数多くの新入社員研修プログラムが存在するなかで、株式会社日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)が提供している『新入社員基本行動トレーニング』が、企業の教育担当者の注目を集めている。そこで今回、この研修プログラムについて開発メンバーとして携わってきた竹田洋介氏に話を伺った。

管理者の役割意識を高める“育成型”診断プログラム
JMAM『アセスメントセンター シリーズⅡ』

短期業績の達成に追われて部下育成がおろそかになっている、日々の仕事をまわすだけで改善と改革意識が不足している──こんな管理者が増加しているといわれてから久しい。管理者の自覚を促し、能力を高めることはできないか。こうした企業の悩みに対する答えとして注目されているのが、株式会社日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)の『アセスメントセンター シリーズⅡ』だ。今回、同社アセスメント事業部の青木千絵、藤原美智子の両氏に、この新しい診断プログラムについて話を伺った。

JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告
日産化学工業
変革を担うリーダーを育てる現場巻き込み型の自己学習制度

通信教育を人材育成に活用し、自ら学ぶ風土を醸成している企業に対し贈呈される「JMAM通信教育優秀企業賞」。2010年は7社が受賞したが、2010年11月号から3号にわたって受賞企業の取り組みを紹介している。日産化学工業は、25年にわたり自己啓発制度を教育の主軸とし、経営戦略と現場ニーズに沿った通信教育講座を開講、高い修了率を誇っている。

JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告
ホンダロック
自ら学ぶ意欲を培う“創造と挑戦”の風土づくり

宮崎県佐土原町に位置するホンダロックは、本田宗一郎氏が私財を投じて設立したキーロックメーカー。同社では、従業員の自主性を重視し、通信教育を自己啓発の手段として活用。高い参加率となっている。同社の根底に流れる企業哲学と、それに基づいて具体化された施策を紹介する。

TOPIC 「2010第一線監督者の集い:全国大会」レポート
日本のモノづくりを牽引する“現場の経営者”たち

製造業の現場リーダーたちが集う全国イベント「2010第一線監督者の集い:全国大会」(日本能率協会主催)が10月21日に横浜で開かれた。東北・関東・名古屋・関西・九州の地区大会で代表に選ばれた10人の優秀事例発表者が、多くの聴衆を前に職場での取り組み事例を発表した。同大会の模様とともに、モノづくりの現場が迎えている環境変化、これからの現場リーダーに求められるマネジメントスキルについてレポートする。

TOPIC 「2010第一線監督者の集い:全国大会」レポート
大野耐一 特別賞
女性リーダー奮闘記 執念のライン改革~炎のバトルを乗り越えて~

製造業の現場リーダーたちが集う全国イベント「2010第一線監督者の集い:全国大会」(日本能率協会主催)が10月21日に横浜で開かれた。東北・関東・名古屋・関西・九州の地区大会で代表に選ばれた10人の優秀事例発表者が、多くの聴衆を前に職場での取り組み事例を発表した。同大会の模様とともに、モノづくりの現場が迎えている環境変化、これからの現場リーダーに求められるマネジメントスキルについてレポートする。

論壇
人材育成の“NIPPONモデル”を考える

厳しい状況に置かれる日本企業。GDPや国際競争力の落ち込みなどを目にし、希望を失うビジネスパーソンも多い。だが、歴史を鑑みれば、日本は何度も困難な状況を乗り越えてきたことがわかる。その原動力は日本人の文化や性質にある。本稿では日本人の特質を踏まえたうえで、現代に適した人材育成法を提言する。