月刊誌『人材教育』2011年06月号

「3.11」(東日本大震災)は勿論、様々な要因で外部環境が激変する昨今、組織と個人はしっかりと足元を固める必要があります。そのために有効なのは、自社の独自の価値観や基本的な考え方(=ウェイ)を再定義し、組織の隅々にまで浸透させること。ウェイは、現場での一瞬一瞬の判断基準、社員の行動の軸だからです。
では具体的に人事・教育担当者は、ウェイの浸透に、どのように働きかけられるのでしょうか。教育方法はもちろん、具体的な工夫を取材事例からご紹介します。
また、「震災緊急企画」として、震災後の働く人のメンタルケアについて、中原淳氏(東京大学)と野口海氏(精神科医・産業医)の特別対談、
さらに南仙台で研修中に被災した講師・北龍賢氏が、その後の数日間に研修受講者・主催者との協力の中で得た「危機時のマネジメント」の要諦について語る特別記事も掲載。
今、人事・教育担当者ができることを考える材料としていただければ幸いです。

自らと対話し
判断力を磨き続け
イノベーションを起こす

変化の激しい現在、企業は常に新たな事態にぶつかっている。 その時に求められるのは、判断力と、新しい価値を生むイノベーションである。 「Leading Innovation」という東芝のコーポレートブランドをつくった 同社 西田厚聰会長が判断力の磨き方と、イノベーションが起きる企業風土の醸成を語る。

指針を見失いがちな時代の
ウェイを実践する人と組織づくり

閉塞感から、現実的な危機感へ――東日本大震災を受け、日本企業は これから厳しい現実に立ち向かうことになる。 荒波を乗り越えるために確実に組織を強化できる方法の1つには、ウェイの浸透・実践がある。 自社の大切にする価値観をしっかりと、現場の隅々にまで浸透させ、 日々の仕事で実践できるようにする方法はさまざまにあることが、取材から明らかになった。 その具体的方法と、ウェイの浸透・実践の意義についてまとめた。

ウェイが実践される組織には
具体的な仕組みがある

言葉としてのウェイは、とかく「美辞麗句」や「お題目」になりがちである。 ウェイでいう価値観を社内のすみずみに満たし、 現場における具体的な行動指針としていくには、どうすればいいのだろうか。 ウェイを「重要な経営資源」と位置づけるHRインスティテュート代表  野口 昭氏に、ウェイが実践される組織の特徴と、人事の役割を聞いた。

利他の心が漂う理念が
“大切にしたい会社”をつくる

大学や大学院で教鞭を執る傍ら、経営学者として 6500社もの企業を訪問してきた坂本光司教授。 坂本氏曰く、優秀な企業の多くが、社員や公共への “利他の精神溢れるウェイ”を持ち、それが事業戦略と深く結びついているという。 そうした、優良企業の共通点とは何か、坂本氏に聞いた。

環境と現場の知恵が育む
伝統のおもてなしの心

1906年(明治39年)創業、2006年に創業100周年を迎えた加賀屋。 そのサービスを一度は経験したいと、国内はもとより、 海外からも訪れる客は跡を絶たない。 2010年12月には、台湾の北ぺい投とう温泉街に進出した。 異なる文化を持つ台湾にも受け継がれた、 加賀屋の流儀ともいえる“加賀屋流おもてなし”。 その背景には、現場での体感を重視した教育と、 社員がおもてなしを発揮できる環境づくりがあった。

「人間として何が正しいか」を
教育と実践で身につける

京セラの創業者、稲盛和夫氏の実体験から 生まれた経営哲学「京セラフィロソフィ」。 「人間として何が正しいか」を判断基準とするこの哲学は、 まさに京セラの経営の原点であり、 全従業員が共有する「判断基準・行動指針」である。 これが同社の現場で生き生きと存在し続けている背景には、 有名な「アメーバ経営」の実践に加えて、体系立てて 定期的に実施されている教育部門の「フィロソフィ教育」がある。

自然を愛し、理念を
とことん話し合う集団

「社員をサーフィンに行かせる会社」、 「精神的報酬のある会社」など、 パタゴニアを形容する言葉はユニークだ。 社員が生き生きと働きつつ、顧客の支持を得ている同社。 そのカギは、同社のパワフルなミッションステートメントと、 それを実現するために自己矛盾すらオープンに 徹底的に話し合う社風にある。

“宇宙一の企業”をめざす
価値観に基づく環境づくり

「宇宙一の企業」をめざす会社がある。 モバイル広告代理店事業を行うライブレボリューションだ。 理想の組織を追求するために、 “人として当たり前で大切にすべき価値観”を 『LR HEART』として明文化し、 採用や評価の制度と連動させて、 従業員の行動へと結びつけている。 「宇宙一」を見据えた企業の環境づくりを紹介する。

組織の価値観を理解して
望ましい行動を発揮できる
リーダーを育成する

株式会社日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が提 供する『ルッキンググラス・エクスぺリエンス』(LGE)は、 経験から学ぶ力を高め、行動を変えるリーダー育成プログラ ム。近年、このプログラムを、企業理念やビジョンなど組織 の価値観に沿った行動を社員に実践してもらう目的で導入す る企業が増えてきているという。そこで今回、JMAM の蕪 木健司、渡辺京子の両氏に、LGE について話を伺った。

ドラッカーの教えを集大成した
認定カリキュラム
『ドラッカーカリキュラム』

経営学者、社会生態学者として知られる Peter F. Drucker( 以下、ドラッカー)。 人間主義を貫きながら、組織とそのマネジ メントを論じ、日本にも熱烈なファンが多 い。この秋、ドラッカーから直接継承され た教えを体系的に学ぶことができるカリキ ュラムが、株式会社日立インフォメーショ ンアカデミーから発売される。今回、同社 の松井慶康氏、青山誠明氏、緒方慎八氏に、 カリキュラムについての話を伺った。

マーケティング②
マーケティングの心理学

前号の第4回では、人事・教育担当者が知っておくべき 経営の知識の中から、マーケティングを取り上げた。 マーケティングとは人間の無意識に働きかけるものであ るということである。本稿では一歩進んで、その働き かけ方に関する心理学を紹介する。

なぜ内省が
できないのか?

現代の企業では、創造性を高めることが求められている。そこで有効なの は、内省型リーダーシップだ。だが、自分を見つめ内省をするのは簡単で はない。今回は、内省を阻む要因を紹介したうえで、どうしたらそれらか ら解放され、内省ができるのかを紹介する。

人材開発のミッションは
仕事で人が育つ仕組みづくり

コンピュータ制御が進む自動車業界 では、ソフトウェアに対する需要が高 まっている。自動車部品メーカー大 手のデンソーでも、こうした状況を 受け、ソフトウェアの開発体制を刷新 するとともに、人材の育成にも一層 力を入れている。開発エンジニアの 教育を企画・設計する福田淳一氏は、 「教育では、人は育てられない。教 育に求められるのは、“主体的に学び、 成長しようという行動を引き出すキッ カケをつくること”だ」と語る。自 身もエンジニアでありながら、15年 の長きにわたってソフト開発の教育を 担当してきた福田氏に、エンジニア 育成への思いについて伺った。

JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告 あいおいニッセイ同和損害保険
「お客様に一番身近な保険会社の実現」に向けた本気の人財育成

日本能率協会では、産業界に有効な能力開発のあり方を普及させることを目的に、 1988年「能力開発優秀企業賞」を創設。 第23回となる今回は、あいおいニッセイ同和損害保険が本賞を、 エイチシーエル・ジャパン、富士通が特別賞を受賞。そこで、その取り組みを紹介する。 あいおいニッセイ同和損害保険では、2000年代前半に起きた 保険料や保険金の支払いに関する問題の猛省から、品質向上を最優先課題と設定。 顧客満足の実現に向けて育成施策を継続して行ってきた。

特別対談
震災後の働く人のメンタルケアについて考える
今、人事担当者にできること知ってほしいこと

3月11日に発生した東日本大震災は、甚大な被害をもたらした。 被災者が直面した現実の惨さ、心の傷の深さは計り知れない。 一方で、震災の影響は日本全体に及び、被災地域外の人にもまた大きな衝撃を与えた。 「仕事が手につかない」、「今、自分は何をすべきかわからない」など、震災後、 自らの仕事観、キャリア観の揺らぎを感じている人は少なくない。 本対談では、こうした価値観の揺らぎをどう解釈し、 働く個人と組織がどのように対処すべきかを考える。

被災体験から学ぶ
危機時のマネジメント

3月11日、営業力強化のコンサル・研修を手がける北龍 賢氏は、 管理職向けの研修講師として訪れていた仙台市郊外で東日本大震災に遭遇。 「情報が遮断され交通網が分断された中、研修参加者らと避難した体験から、 危機管理における活きた教訓を得ることができた」と話す北龍氏が、 自らの被災体験を振り返りつつ、危機管理、リスクマネジメントについて語った。

ウェイ設計の新たなアプローチ
急がば回れ! 施策展開より
コンセプト設計にこだわる

経営理念やウェイの構築・浸透は、ビジネスリーダーたちを悩ませる古典的な命題である。 本稿では、そのコンセプト自体を魅力あるものにすることの重要性を説くとともに、 コンセプトを検討する際に重要な視点について提案したい。 企業として大切にしてきたもの――いわば「内省する」ことももちろん重要だが、 日本企業においては、「外」――外部環境をあえて意識することがより重要である。

効率よく聞きたいことを話してもらうために
人事に役立つ“リサーチ力”

人事が真に戦略的人事となるためには、現場の実態を把握し 戦略と現場が乖離しないようにブリッジをかけなくてはならない。 そこで現場の実態を知るうえで、必要になるのが、「リサーチ力」である。 相手から聞きたいことを聞き出し、本音を語ってもらえる方法を、具体的に紹介する。

知識と人間力を兼ね備えた
“自律した人材”を育成する

トレンドマイクロでは、知識・技術と人間力を兼ね備えた人材の育成に力を入れている。なぜな ら同社では、学習する組織になることをめざしているからだ。社員一人ひとりが自律し、役職を 問わずリーダーシップを発揮できる組織が理想の姿だという。社員の自律性を高めるために力を 注ぐ同社の人事部を訪ねた。