月刊誌『人材教育』2011年11月号

経営環境の変化が激しく複雑になってきた現在、トップダウンではなく、 それぞれの部署、職場、個人が自立的に変化に対応していかなければなり ません。その際、職場の要として真っ先に変化を察知しなければならない のが、管理職です。
変化に対応するためには、過去の成功に捉われずに現実と向き合い、 定期的に自らを振り返り、新しいスキルや知識を身につけていくことが必要です。 そして最も重要なのが、多様な価値観に触れ、考え方を柔軟にし、常に自己変革をすることです。 本誌では、それらを可能にするのが、「学ぶ力」(振り返り⇒気付く⇒考える⇒実行する)だと 考えています。「学ぶ力」は新入社員や中堅社員に必要だと考えられがちですが、 実は管理職こそ最も「学ぶ力」をつけることが求められているといえます。
ですが、実際には多くの管理職がプレイングマネジャー化し、学ぶ時間がないのが 現状ではないでしょうか。そうした現状を鑑み、本特集では管理職が「何を」「どのように」 「どうやって」学び続ければいいのか、そして人事部がどうしたらその学びをサポート することができるかを紹介します。

巻頭インタビュー 私の人材教育論
顧客と一人の人間として
真剣に向かい合う社員は
組織の温かな絆が生む

東京海上日動システムズは、東京海上日動火災保険をはじめとする東京海上グループのIT戦略を担うシステム会社だ。社員間のつながりを醸成する「コミュニティ活動」や競争しない人事評価制度など、「毎日行くのが楽しい会社」をめざす取り組みはどれもユニークで、IT業界における能力開発、組織づくりのモデルケースとして高く評価されている。全社員を優秀なSEとして育成し、世界一の保険システム会社をめざしたい、と語る横塚裕志社長に、人づくりにかける想いを聞いた。

特集
既任管理職は学んでいるか?
学習する管理職が会社を強くする

自律的に学ぶものだと考えられてきた管理職。企業が提供する教育を見ても、重きが置かれるのは新任管理職まで。それ以降は手薄になっているのが現状だ。だが、管理職が任されている職場自体が、価値観の多様化、グローバル化、業務量の増大などによって変化し続けている今、組織運営はますます難しくなっている。他方、「マネジメント能力の向上」は多くの企業で課題となったままである。この状況を打破するためには、企業が管理職の学ぶ環境を整え、学びを支援し、自律的な学習へと促すことが必要ではないだろうか。時代に即した新しい管理職の学びと企業のかかわり方を探る。

Opinion 1
専門的な知識を増やし組織としての余剰を生む
ミドルの学びとは

一人前とは、通常が想定される状況で仕事ができること。そのため環境が変化し続ける現在では一人前であるためには継続的な学習が必要だ。だが、起こりつつある環境変化を前に、「何を学ぶべきか」を考えるのでは間に合わない。変化に対応する準備をしておくために、ミドルは、何をどのように学ぶべきか。そして人事はどのようなサポートができるのか。

Opinion 2
経験の捉え直しと言語化による
管理職の“学び”

組織を牽引する既任管理職が学び続けることは、企業の成長に直結する。しかし、管理職ともなると忙しく、研修の機会も減る。こうした中で、どのように学ぶことができるのか。管理職の学びを研究してきた近畿大学経営学部の谷口智彦准教授は、管理職なら誰しもが持つ経験を意識的に捉え、言語化する工夫の中で、学びの質を高めることができるという。管理職が学び続けることの重要性と、その方法について聞いた。

Opinion 3
学ぶ上司に部下はついてくる――
人間力のあるリーダーとなるために

スキルなどの左脳的能力に偏るな、今、管理職に本当に求められているのは部下の心をつかむ“右脳的能力”だ――こう話すのは、ビジネスアドバイザーでビジネス書著者の古川裕倫氏。その力は、日常のあらゆる機会を無駄にせず、学ぶことによって身につくという。23年にわたる商社マン生活を通し、つかんだ「先人・先輩の教えを後世に順送りする知恵」とは。

企業事例1
研修とOJTの繰り返しで
組織の要=課長職を鍛える

キヤノンシステムアンドサポートでは、昨年から既任課長職に対する教育プログラムをスタートさせた。同プログラムは、研修とOJT(現場での実務)を繰り返しながら、課長職として課の目標を設定し、目標を必達するための力、すなわち攻める力を身につけていくというもの。心構えや姿勢といった「守り」の教育になりがちな管理職教育を、「攻め」の教育へとシフトさせた同社の教育を紹介する。

企業事例2
対話と経験の振り返りから
管理職が学ぶメンタリング

住友スリーエムでは、課長職までの全社員を対象にメンタリングプログラムを実施。社員の自主性を重視した制度だが、メンタリングを単なるキャリア相談の場としてとどめず、自主的な学びの機会とするために、人材開発部門がサポートする独自の工夫をしている。管理職は、メンティとして相談することも、メンターとして相談に乗ることもある。この双方の立場での学びが、管理職が日常的に学ぶうえで大きな役割を果たしている。

企業事例3
マネジメント力を育て
変化をリードできる管理職を育てる

激化する競争の中では、実務を実直にこなす能力を磨くだけでは勝ち残ることはできない――そのことを痛感し、変化をリードできるマネジメント層の育成に乗り出した大阪製鐵。もともと真面目に学習する風土が醸成されていた同社が、マネジメント層に何を求めているのか、求めることをどのように学んでもらおうとしているかを紹介する。

覆面座談会
管理職のホンネ
会社全体の成長は管理職の成長から始まる

組織の管理、人材育成、予算管理など、日々、多忙を極める管理職たち。管理職自身は自分たち自身の学びの機会をどう捉えているのか――。4名の現役管理職によるディスカッションから見えてきたのは、会社の“これから”を真剣に考える管理職たちの姿だった。

新入社員から管理職まで
「気づき」によって行動が変わる
野外体験学習プログラム「BSR」

「参加者に喜ばれる研修」「記憶に残る研修」として導入企業から評価され、9割を超える受講リピート率を誇る研修がある。旭化成アミダスが提供する野外体験学習プログラム「BSR(ビジネス・シミュレーション・ラリー)」である。座学ではなかなか得られない行動レベルの変容をもたらすプログラムとして、新入社員から管理職まで、幅広い階層を対象に活用されている。

管理職が鍵を握る!
ビジョン&戦略で夢や志を実現する

ミッションからビジョン、ビジョンから戦略へ、夢や志を具体的な施策へ落とし込んでいく過程で目的がぶれてしまう──こうしたことが、なぜ起きるのか。株式会社HRインスティテュート(以下、HRI)の狩野尚史氏に、目的をぶれないように戦略に落とし込み、リーダーの志や夢を実現する『ビジョン&戦略プログラム』について話を伺った。

ケーススタディで困難を擬似体験
JMAMの実践的な管理者向け通信教育

ビジネス環境が厳しさを増している今だからこそ、管理者は“管理者としての基本”をしっかりと身につけなければならない。しかし、実際には多くの管理者がプレイングマネジャー化し、基本をしっかりと学ぶ時間がないのが実情である。また、時間に縛られない学習ツールはあっても、管理者の実務に応用できる教材がほとんどない。管理者は、どのようにして基本を身につけていけばよいのか。株式会社日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)で通信教育の添削講師を務める新谷恒久氏と、同社通信教育教務部の原真人氏に話を伺った。

既任管理者を活性化する
一段高い視点で改革を実現する管理者の育成
-気づいて成長する「シミュレーション型研修」

組織力を高めるには、管理者のマネジメント力とリーダーシップの強化が不可欠だ。しかし、業務や組織の多様化、プレイングマネジャー化などの影響により、「マネジメントをしている余裕がない」「短期成果を求められて、部下を育成する余裕がない」といった悩みを持つ管理者が増えている。こうした状況に対してどのような手を打てば良いのか。「既任管理者再強化」をテーマにした研修の講師を務める日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)の上田敏夫氏に聞いた。

特別レポート 差別化が進む研修施設・貸し会議室
研修市場にも震災ショック
各社はサービス面の再強化に注力

2008年のリーマンショックを境に、大きく縮小した研修サービス業界。2010年度の後半から、ようやく回復基調に乗ったものの、本年3月の東日本大震災で市場は再び大きなダメージを受けた。そうしたなかで、研修施設、貸し会議室などを提供する研修関連サービス各社は、ハード・ソフト両面のサービスを改めて強化し、市場の掘り起こしに努めている。研修サービス市場の最新動向をレポートする。

酒井穣のちょっぴり経営学 第10回
ファイナンス2
企業は資金をこう調達する!

前回は「ファイナンス1」として、会計とファイナンスの違い、そして「未来のお金を考える」というファイナンスの基本について確認し、その計算方法についても詳しく紹介した。今回は具体的に、企業の中のファイナンス活動――資金調達の仕方について追ってみていく。

人材教育最前線 プロフェッショナル編
自分と向き合うことの第一歩は
何を感じているかを問うこと

2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して誕生したアステラス製薬。同社では、中長期ビジョンで「他社を凌駕するスピード」「環境変化に対応する変革力」「競争力を生み出す専門力」「更なる力を生み出すネットワーク力」を期待する人材像として掲げている。それらの力を有する人材を育成する人材育成体系が「アステラスビジネススクール」だ。その企画から具体的研修の実施運営までを担っているのがアステラス総合教育研究所である。中でも、新入社員から中堅社員向けの研修の企画・運営を取りまとめる朝妻綾子氏に、教育に対する想いをうかがった。

内省型リーダーシップ 最終回 特別対談
しなやかに生きるための内省のススメ

「自分を見つめること」=「内省」がリーダーシップを育てる上で効果的であるという研究結果をもとに、新しい“内省型リーダー”のあり方を、これまで全6回にわたる連載で解説してきた。連載終了にあたって、著者2名による対談をお送りする。連載を踏まえて見えてきたのは、内省がリーダーにとってだけではなく、全ての人にとって持つ意義だ。なぜ今内省なのか。内省は私たちにどのような変化をもたらすのだろうか。

TOPIC 第18回 日本産業精神保健学会レポート
「希望のない社会」で健康を生成し
人の成長を支援していくには

2011年7月1日~2日、「健康生成のできる社会を夢見て~未成熟社会における成長支援の方法」というテーマで行われた第18回目の「日本産業精神保健学会」(於:東京都内)。精神科医、産業医等々の産業保健スタッフに加え、企業の人事労務担当者、弁護士や社会保険労務士といった、メンタルヘルスにかかわる専門家の集まる学会である。「なぜこのようなストレス社会においても元気で働き続けられる人がいるのか?」という健康生成論、また未成熟社会への「成長支援」という新たな立場でメンタルヘルスを捉えるものだ。本稿ではその一部のエッセンスを紹介したい。

論壇1
~カギは「発揮すると活力の出る強み」~
強みで高い成果をつくり出す時代の到来

社員一人ひとりの弱みを克服するよりも、強みを活かしたほうが早く高い成果を上げられることは認知されてきた。しかし、実際に社員一人ひとりの強みを活かしている組織はまだ多くないように見受けられる。そこで、強みを活かした個人・強みを活かした組織についてのポジティブ心理学者の考察、強みに対する考え方、その視点と応用について、事例も含めて解説を試みたい。一人ひとりがイキイキと働き、高い生産性を上げる組織づくりに、「強み」は重要な推進力になるのである。

論壇2
~水野忠辰の悲劇に学ぶ~
改革を進める組織幹部が留意すべきもの

古今東西、さまざまな組織が問題に直面し、紆余曲折を経てきた。その紆余曲折が「歴史」だとすれば、失敗にも成功にも学ぶところはある。本稿では、中でも江戸時代中期、三河国岡崎藩(現在の愛知県東部)で起こったある失敗例から、組織改革とリーダーのあり方について、現代にも通じる教訓を学びたい。

人事の職場拝見! Vol.10
モットーは『鉄は熱いうちに打て』
現場で活きる財産となる育成を

ビジネスフォーム事業をはじめ、情報管理ソリューションを提供するトッパンフォームズ。常に新しいソリューションを提供するために必要なのは、自ら道を切り拓く人材だ。そのためには早期からの育成が重要だとして、同社では新入社員育成に特に注力している。その具体策と背景にある思いについて、総務本部に話を聞いた。