月刊誌『人材教育』2012年06月号

「ビジネスパーソン、特にリーダー層には『人間力』が必要……」とはしばしば聞かれる話です。 この「人間力」とはどういう力なのでしょうか。 
「人間力」は、明確な定義はないといわれ、国や学校法人や企業によって独自に解釈され、定義されてきました。多くの場合、人間性や人格、人望などと言い換えられることから、 論理性だけではなく感情を理解し、人の心を動かす人材の姿が浮かび上がってきます。
殊に、グローバル化が避けられない今日、グローバルにも通用する人間力を備えた人材の育成は急務です。
編集部では、そうした人間力とは、「どんなダイバーシティ環境の中でも深い信頼関係を構築できる能力や、 そのための教養を身につけていること」と捉え、その本質に迫るとともに、それらの力を磨いていくための具体的なヒントを提示します。

巻頭インタビュー 私の人材教育論
素直に物事を見る感性が「考える力」を養いイノベーションにつながる

医療崩壊が叫ばれる中、八王子に4つの医院を開設し、「家族ボランティアシステム」や独自の電子通貨「はびるす」の発行など、イノベーティブな改革を次々と行う北原茂実医師。さらに「社会は経営しなければならない」といい切る北原氏の活動は、医療の枠を越え東北復興のためのコンサルティングや日本の医療を輸出産業にするための企業活動などにも発展している。社会の矛盾や問題に気づき、イノベーションを起こしていくためには、どのような眼差しを持ち、考えればいいのか――

特集
グローバル時代に深い信頼を築く心を動かす「人間力」の磨き方

人間関係構築が難しくなっている昨今の職場。現代の企業人には、どんな環境下でも深い信頼関係を構築できる、「人間力」や「人間性」を保有することが、求められているのである。では、「人間力」とはどんな能力で、どうしたら磨くことができるのか。

Opinion 1
社会を創り上げる人間力は社会の中で育てられる

「人間力」は多くの人に語られ、解釈もさまざまに異なる。そこで、1つの指針として、2003年に教育、産業、労働・雇用の関係者が集まって討議した「人間力戦略研究会」の議論、定義を取り上げたい。当時研究会の座長を務めた東京大学大学院の市川伸一氏に、教育界の立場から、人間力とは何か、そしてどう高めれば良いかを聞いた。産官学の壁を超えて論じられた人間力の議論から、企業も多くを学ぶことができる。

Opinion 2
人間社会に息づく『論語』から「忠恕」の心を学ぶ

「人間力」とは非常に幅広い概念だが、多様な立場の人々と深い信頼関係を結ぶ能力と捉えることができる。その「人間力」を考える時、ビジネスパーソンが『論語』から学ぶことは多い。『論語』はまさに、自己と他者という2軸で自らを見つめるための書であり、歴代の為政者、名だたる経営者ら「人間力」に長けた人々に支持されてきた。幼少時から『論語』に親しみ、ビジネス経験を積む傍ら『論語』を学び、現在は企業や教養塾などで『論語』の教えを伝える青柳浩明氏に、『論語』に見る人間力について聞いた。

Opinion Column 1
人を動かす「人間力」は“習慣”で高められる!

なかなか捉えることが難しい「人間力」を、独自の視点から分析しその高め方までを提案しているのがイコアインキュベーションだ。代表の紺野真理氏は、海上自衛隊での勤務経験などから、「人間力」を持つ人の要素を8つに整理。さらに、どんな人でも「習慣」で、人間力を高めていけると説く。その心は。

Opinion Column 2
「人間力」あるリーダーは日々の訓練で利己心を克服する

近年、日本では、人間力のあるリーダーを希求されているが、人間力を持つリーダーとは、家族、組織、社会、国家、世界というレベルで人々を感化して行動を起こさせる、強い影響力を発揮する人のことだ。 そうした人は日々の人間関係の中で、自身を鍛える。

企業事例1 アトラス
働く1人ひとりの人生を豊かにする人間力を育てる

個別指導教室「ユリウス」を運営するアトラスでは、アルバイトの大学生・大学院生を対象に、毎月1回のセミナーを行っている。そこでは、自己信頼と相互信頼を土台とした「人間力」を高めることと、学生の就職活動支援を目的とした講義が行われている。同社の事例から、人間力という広い概念を育てる企業のあり方を学びたい。

企業事例2 味の素
理念の具現化、実行を通して人間としての力量を高める

人間力と銘打った教育を行っていなくとも、理念に一人の人間として求められる素養を掲げ、追求していく結果、人間力が鍛えられていくという企業もある。そうした企業の1つが味の素社だ。同社は、創業100周年を機に理念を再定義した。同社の理念には、社員としての有り様だけでなく、一人の人間としても不可欠な素養が含まれる。理念を通して人間力を鍛え続ける同社の取り組みを紹介する。

企業事例3
「道学」で人格を向上し「三方よし」の実現をめざす

人格の育成向上なしには、どんな知識やスキルも真に活かせず、商売(ビジネス)も成り立たない――近江商人のDNAを受け継いできた小泉産業グループが行う人間性教育とは。「道学」と「実学」が折り重なっていく独自の教育体系を明らかにする。

「信頼関係作り」をベースに人が育つ企業風土を醸成

より安全で、より便利な暮らしを追求してきた結果、未知への挑戦であるアドベンチャーは、一般の日常から遠く離れた存在となった。しかしここにきて、アドベンチャーが人間形成や信頼関係作りという点で注目され、企業の組織作りに活用されている。世界中の企業で導入されているプロジェクトアドベンチャープログラム(以下、PAプログラム)を日本で展開している林氏に、企業がどのようにアドベンチャーを活用しているか、お話を伺った。

“部下のために生きる”人間力の高いリーダーを育てる

先が見えにくい現在のビジネス環境の中で、組織を牽引するリーダーには高い人間力が求められている。特に近年は、企業のグローバル化に伴い、グローバルリーダーの人間力が注目されている。しかし、そもそも人間力が高いとはどのような状態のことをいうのか。また人間力を高めるためにはどうすればよいのか。株式会社HRインスティテュート(以下、HRI)代表取締役社長の野口吉昭氏に、お話を伺った。

「感じる力」を活かし感動から考える力を育む

ビジネスにおいては様々な判断や意思決定をする場面に遭遇する。そんな時、ものごとを論理的に考える力は非常に重要だ。しかし、論理的思考ばかりを高めようとする一方で、人が本来持っている「感じる力」がなおざりになってはいないだろうか?「感じる力」について、真正面から取り上げて検証している株式会社イコアインキュベーション。昨年12月には、「感じる力」こそ「人間力」の根幹となるものとして、セミナーを開催した。今回は、その「感じる力」について、代表取締役の紺野真理氏と、人材開発事業部の井上真理氏に語っていただいた。

読者提言 論壇
部下を活かすも潰すも課長次第~部下を幸せにする課長は何が違うか~

人間力とは、信頼関係を築くうえで重要な要素であるが中でも課長と部下の信頼関係は、永遠のテーマの1つである。課長と部下は、大抵の場合、お互いがお互いに対して、「望むことをしてくれない」という思いを抱えているものだ。それでは、日々の仕事に悪影響が及ぶ。良い仕事を生む両者の関係性には、何が必要なのだろうか。

人材教育最前線 プロフェッショナル編
相手を学び取ろうとすれば、どんな困難も乗り越えられる

日本通運の情報サービスの中核を担う日通情報システム。同社は、デジタル技術でモノ(情報)の収集・整理・移動を軸に据え、2004年に設立した。同社で2008年から管理部部長として人材育成や総務業務などを担っているのが、藤枝直人氏だ。海外勤務の経験が豊富な藤枝氏は、常に相手を知ることで、困難をクリアすることを信条としてきた。藤枝氏が今、力を注ぐのが異なる文化で育ってきた人材を“1つのチーム”にまとめ上げることにある。「毎日が印象深い」と話す藤枝氏に、異文化に接してきたからこそ感じたという人づくりへの思いを伺った。

連載 酒井穣のちょっぴり経営学 第17 回
未来を予測できない時代の戦略論の基礎①

今回は「戦略」について取り上げたい。戦略とは、何か問題を解決していったり、将来に向かって成し遂げたいことを進めていくことである。しかし、実際に戦略を立てるには、何をどう考えていけばいいのだろうか。不確実な時代に、少しでも成功の確率を高めていくための方法とは。2回にわたって解説する。

連載 グローバルビジネスに役立つ教養の本棚 第6回
歴史を学ぶ③「 日本史」アイデンティティをつくる

日本史を学ぶのは、外国人の質問に答えるためではない。日本人のアイデンティティの形成に欠かせないからである。そしてその確立は、グローバル人材の要件の1つといってよいだろう。

連載 中原 淳の学びは現場にあり! 特別対談
演じて振り返って気づく「学び」の世界
インプロで組織はどう変わる?

昨今、さまざまな組織、企業で導入され始めたインプロ=即興演劇のワークショップ。インプロが組織を揺さぶる時、一体何が起こるのか?共著『インプロする組織 予定調和を超え、日常をゆさぶる』(三省堂)を上梓した東京学芸大学・高尾隆准教授と東京大学・中原淳准教授が特別対談。インプロが組織にもたらす可能性を探る。

TOPIC ①
第2回 IMA アントレプレナー委員会特別企画「即興劇でイノベーションを学ぶ」
“集中と解放”の体験から学ぶリーダーシップとイノベーション

2012年3月23日、日本工業倶楽部にて第2回国際経営者協会(IMA※)アントレプレナー委員会が開催された。経営者・起業家を始めとして、要職に就くビジネスパーソンが多く参加する集まりである。今回のテーマは慶應義塾大学の髙橋秀明氏と、CP Project主宰の小山裕嗣氏による「即興劇でイノベーションを学ぶ」。一見経営や組織運営と何の関係もなく思える即興劇から、イノベーションやリーダーシップの種を体感することができるというプログラムの様子をリポートする。 ※IMA:1993年に外資系企業経営者協会として創設。その後、ボーダレスな企業理念を共有する外資系企業および国内企業の経営者が融合して活動を広げる。2009年現名称に変更。

TOPIC ②
日本能率協会主催『“組織開発”フォーラム2012』レポート
チーム・組織の能力を引き出し企業の持続的成果を実現するヒント

去る、2012年3月13日・14日の2日間にわたり、日本能率協会主催の『“組織開発”フォーラム2012』が世界貿易センタービル(東京都港区浜松町)にて開催された。同フォーラムは、“組織開発”という切り口で、組織の能力を最大限に活かし、拡大する取り組みに関する学びと交流の場となることをめざし、開催されたもの。本稿では、同フォーラムの1日目の主だった講演とパネル討議を、ダイジェストで紹介する。 *慶應義塾大学大学院経営管理研究科/ビジネス・スクール教授の髙木晴夫氏の講演「日本企業の組織力 ハイブリッド型組織への挑戦」は本誌5月号の特集opinion1の髙木氏のインタビューを参照。

連載 人事の職場拝見! Vol.17
カシオ計算機
世の中になかったものを創造して貢献する
挑戦意欲の高い人材の育成をめざして

電機メーカー、カシオ計算機。他社にはない新しい製品づくりに定評のある同社では、企業理念である『創造と貢献』を有言実行してきた企業だ。そうした同社の育成の特徴は、技術者の開発マインドの醸成、次世代リーダーを早期に育成することにある。理念を実行し、グローバルに展開している同社の人材育成を紹介する。